豆腐屋と千両役者

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昔 五座(*1)の近くに水質のよい井戸を掘り当て 豆腐屋を開業 繁昌している夫婦があった

八方(*2)を灯して朝早くから豆腐作りに精を出していると バタバタとけてくる ただならぬ足音
と思うと 灯りがもれたのか「助けてくれ」と飛び込んできたのは今をときめく千両役者

芝居のはねた後 着替えをすませて淋しい夜道を帰る中 物騒な男に襲われたらしい

命を助けてもらったお礼に役者名を付けた饅頭を売り出すことを承知したので ますます繁盛したそうな

その役者の家に 正月になると花籠をもらいたさに 母は年始に行ったそうな

若い日の母にもそんなほほえましい日があったという

(*1)五座=道頓堀五座
    (戎橋南詰から東側にかつて存在した浪花座・中座・角座・朝日座・弁天座の五つの劇場のこと)
 (*2)八方=八方行燈=八間:平たい大型の掛行燈


《メモ》

「母」とは私の祖母のことで明治元年生まれ。
大阪城大手門前で袋物商を営む家に育ったとか・・・

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