親の務め

(1a-17)

子とちゃんの手を引っぱって母ちゃんが園にはいって来るなり母子三人がワッと泣き出した
これは母子家庭の人で 母さんは勤務 子は小学1年 ちゃんは此処の保育園児
もう保育園は皆帰ってガランとした時刻

母親に少しでも早く夕飯を作ってもらいたいばかりに 又小学1年では下校が早いので弟を連れて帰ることでカギッ子の淋しさを救われたいし 幼い頭をひねっての行動でした
しかし年端も行かない子供の事 ちゃんが近所の子にいぢめっ子されると 子が敵討ちに出て皆の鼻つまみになった

今日も今日とて子のヒステリーがエスカレートして 取ってはヒッカキ つかんではひっかき 夜叉(*1)か巴御前(*2)の様な働きだったらしい
仕事帰りに市場の買い物を済ませ 帰宅したとたんにどなりこまれたお母さんが目に見えるよう
「どうしましょう」と母さんが云う
「こんな事では仕事にも行けない」と云う

だから云いました
6才の小学1年の子は一人 向うは世帯盛りの大人が4、5人と喧嘩しているのよ
子はえらい 子はしっかりしてると思うな
お母さんは先ず子の味方 理解者 友達にならなければいけないな
味方になったらガンコに口をつぐんでいるのも話してくれると思うな
よく話を聞いた上で子にも謝らせようし お母さんも奥さん方に謝るのよ
又 子に理のある所はおだやかに奥さん方と話し合って 姉弟が近所の人達に可愛がられる様にしむけるのが親のつとめと云うものじゃない
晩食一回位たべなくても死にはしない
今から保育園の小母ちゃんがこう言ったと話していらっしゃい
何なら私も行って上げようか
と云ったら
親の務めがよく分りました
と帰っていった

あれから万事都合よくいっていたのに
姉弟大学も出て就職も出来たと喜んだのも束の間
母ちゃん若死してしまった

(*1)夜叉:やしゃ。 八部衆の一。形貌醜怪で人を害し食うなど、猛悪なインドの鬼神。
(*2)巴御前:巴(ともえ)。源義仲の妾。  武勇すぐれた美女で、常に義仲に従い、武将として夫を助けた。



《メモ》

・・・

コメント

このブログの人気の投稿

書き始めたきっかけなど

暑さ寒さも彼岸まで?

面白い投書